リセッションとは何かをわかりやすく解説!安定した収入を得るための投資のコツを紹介

リセッションとは、景気後退局面のことを指します。景気の先行きそのものを見通すのは難しい部分がありますが、どのような場合にリセッションというのかを知っておくことで、投資のタイミングを見極めるのに役立つはずです。

投資は適切な時期に行うことがとても重要です。この記事では、リセッションや景気の捉え方、投資に与える影響などを詳しく解説します。

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リセッションの意味とは

リセッションについて正しく捉えるには、言葉の定義をしっかりと押さえておく必要があります。景気に関する4つの波や日米での違いについて解説します。

リセッションは景気を表す言葉

リセッションとは、「景気後退局面」のことを指します。資本主義経済において、景気の拡大期と後退期は数年を周期として、交互に繰り返されるといわれています。

景気の拡大期のピークから後退期に入る転換点を「景気の山」といい、その逆を「景気の谷」と呼びます。つまり、リセッションとは景気の山から谷までの局面を表す言葉です。

景気が低迷することによって不況に至る時期であり、一般的には不景気ともいいます。不況が深刻化した状態を「恐慌」といい、過去には1930年代のアメリカに端を発した「世界恐慌」などの例があります。

景気後退の定義は国によってさまざまですが、欧米諸国では国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となった場合をリセッションと見なしています。日本においては、内閣府が毎月公表している景気動向指数のディフュージョン・インデックス(DI)の値が、景気拡大局面においては50%を上回り、景気後退局面では50%を下回る傾向が見られます。

参照:内閣府 景気動向指数

リセッションが起こると単に経済へ影響を与えるだけでなく、人々の価値観や社会の動向にも影響を与える部分があるでしょう。一方で、需要に対して供給が過剰だった部分が見直され、経営の合理化や組織のスリム化が進み、次の景気拡大期に移るための準備期間とも捉えられる面があります。

景気は循環している

景気が良い・悪いといった言葉は一般的にも使われるものですが、好景気であれ不景気であれ同じ状況が続くわけではなく、景気は常に循環していると捉えられています。リセッションは景気循環における4つの局面の1つであり、それらを整理すると次のとおりです。

好況 景気が良い状態であり、株価は上昇傾向にある
後退(リセッション) 景気が悪い状態であり、株価は下落傾向にある
不況 最も景気が悪い状態で、株価は低調になる傾向がある
回復 不況から好景気に変わる状態で、株価が再び上昇傾向を見せる

一般的に、上記の4つのサイクルは3~5年で循環しているといわれています。景気拡大期(回復から好況への流れ)は2~3年程度がかかるのに対して、景気後退は1~2年というスパンとなっています。

景気循環が起こる原因としては、需要と供給のバランスが変化をすることがあげられます。商品やサービスの生産と消費のバランスが崩れることによって、景気循環が起こるものと考えられています。

現代の経済社会は複雑な構造となっていますが、基本的な景気循環のサイクルに変わりがないため、まずは基本となる考え方を押さえておくことが大切です。次に、景気に関する4つの波について解説します。

景気に関する4つの波

景気循環において形成される4つの波があります。これは景気循環の周期を短期・中期・長期で捉えるものであり、サイクルの長さに違いがある点を押さえておきましょう。

4つの波(景気循環)
・キチンの波
・ジャグラーの波
・コンドラチェフの波
・クズネッツの波

上記の4つの波が示すサイクルはあくまで目安ですが、広い視点で景気動向を考えるうえで役立ちます。それぞれの基本的な考え方を見ていきましょう。

キチンの波

キチンの波のポイント
・景気循環が約40ヶ月サイクルで訪れる
・根拠は「企業の在庫変動」
・現代の産業構造においてはあまり当てはまらない部分がある

キチンの波(Kitchin Cycles)においては、景気循環が約40ヶ月サイクルで訪れるとされています。他の3つの波に比べると短い周期で景気循環が訪れると考えられているのが特徴です。

アメリカの経済学者であるジョセフ・キチンが提唱したことから、キチンの波と呼ばれています。キチンの波の根拠となっているのは、企業の在庫変動です。

在庫への投資がどのように行われているかを見れば、景気動向が分かるという考えに基づいています。たとえば、小売業界では景気が良く、商品がどんどん売れる時期には大量に仕入れを行って在庫を十分に確保します。

しかし、景気が悪い時期には商品が売れないため、仕入れを減らして在庫の量も減らすでしょう。また、小売業の動きと連動して卸売業やメーカーの売上も左右されていきます。

そして、メーカーの売上は労働者の賃金にも影響を与え、連鎖的に影響していくものだと考えられているのがキチンの波の考え方です。しかし、キチンの波が提唱されたのは1900年代初頭であるため、当時と比べると産業全体に与える小売業界のインパクトは相対的に小さくなっています

在庫以外にも、景気に影響を及ぼすものが多くなっているため、現代の産業構造においてはあまり当てはまらない部分があるといえるでしょう。

ジュグラーの波

ジュグラーの波
・景気循環が約10年単位で訪れる
・企業の設備における「耐久年数」が約10年であることが根拠
・設備投資の需要が景気に影響を与えると考える

ジュグラーの波(Juglar Cycles)は、フランスの経済学者であるジュグラーによって提唱された理論です。ジュグラーの波においては、景気循環が約10年単位で訪れるものとされています。

この説の根拠は、設備投資の変動によるものです。企業の設備における耐久年数が約10年であることから、景気循環に大きな影響を与えているものと考えられています。

工場を新設したり、生産設備を購入したりする時期になると、設備を供給しているメーカーの売上が上がるので、結果的に労働者の賃金も上がるといった仕組みです。しかし、設備投資の動きが一巡すると、メーカーの売上が下がり労働者の賃金も下がってしまいます。このように設備投資の需要が景気に影響を与えると考えるのがジャグラーの波です。

コンドラチェフの波

コンドラチェフの波
・景気循環が約50年周期で訪れる
・根拠は「技術革新」
・人工知能やナノテクノロジーなどが今後の景気の山になると考えられる

コンドラチェフの波(Kondratieff Cycles)は、旧ソビエト連邦の経済学者であるコンドラチェフが提唱した理論です。コンドラチェフの波においては、景気循環が約50年周期で訪れるとされています。

根拠となっているのは技術革新であり、画期的な技術が生み出されることによって景気が上向く一方で、ある程度技術が普及してくると飽和状態となって産業そのものが縮小していく点に注目しています。コンドラチェフの波では、蒸気機関や紡績の技術革新が景気の山を生み出し、そこから鉄道や鉄鋼などの発明が次の景気の山を形成したと考えられているのが特徴です。

電気や自動車、石油化学などその後の技術革新もコンドラチェフの波によれば、景気の山が生じているものと解釈されています。ここで紹介している4つの波の中では最も長いサイクルで捉える景気循環であり、この考えに基づけば人工知能やナノテクノロジーなどが今後の景気の山になると考えられます。

クズネッツの波

クズネッツの波
・約20年サイクルで景気循環が訪れる
・「建物の改修や建て替え」が約20年周期で行われていることが根拠
・特に不動産業界や建設業界の景気を左右する原因

クズネッツの波(Kuznets Cycles)は、アメリカの経済学者であるサイモン・クズネッツによって提唱された理論です。クズネッツの波では約20年サイクルで景気循環が訪れるものとされています。

クズネッツの波の根拠となっているのが、建物に関する需要です。建物の改修や建て替えが約20年周期で行われていることに着目しており、景気に大きな影響を与えるものとして考えられています。

建物の耐久年数は一定の規則性が見られますし、建設投資は事業規模が大きいことから、国の経済に与える影響もそれなりのものがあります。特に不動産業界や建設業界においては、景気を左右する原因となるでしょう。

アメリカと日本のリセッションの定義

リセッションに対する捉え方は、先に述べたように国によって異なります。欧米諸国ではGDPが2四半期連続でマイナス成長に陥ると、景気後退と見なすのが一般的です。

参照:大和ネクスト銀行

それに対して、日本ではDIが50%を下回ると景気後退に入ったと見なされることがあります。日米による捉え方の違いはありますが、基本的には成長が鈍化してきたタイミングが、景気後退のサインと捉える場合が多いといえるでしょう。

また、日本の金融政策を決める日本銀行では、景気循環を回復・拡大・減速・後退の4つの局面で構成されているものと考えています。景気がこの4つの局面のどこにあるかを判断する目安として、需給ギャップ(需要と供給の差)と方向性だとしています。

GDPとは何か?

GDPは国内総生産のことを指しており、2022年現在はアメリカが世界第1位となっています。国内総生産は一定期間内にその国で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額を表すものです。

そのため、日本企業が海外の工場などで生み出した付加価値はGDPには含まれません。そして、GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があります。

名目GDPは価値の総額で算出するものであるのに対して、実質GDPは名目GDPから物価変動の影響を取り除いて算出するものです。2つのGDPはそれぞれ役割があり、名目GDPがその時点の経済規模を知るのに適しているものであるのに対して、実質GDPは経済成長の度合いを時系列で比較するのに適しています。

名目GDPと実質GDPの違いについては、たとえば各年で売れたパンの個数と市場価格で比較をしてみると次のようになります。

売れたパンの個数 パン1個あたりの価格
2020年 5万個 100円
2021年 6万個 110円
2022年 6万個 150円

名目GDPの場合は、販売個数に市場価格をかけ合わせることで計算するので、以下のようになります。

名目GDPでの計算

2020年の名目GDP 500万円(100円×5万個)
2021年の名目GDP 660万円(110円×6万個)
2022年の名目GDP 900万円(150円×6万個)

一方、実質GDPによる計算は名目GDPから価格変化による影響を取り除いて計算するため、以下のように計算されます。

実質GDPでの計算

2020年の実質GDP 500万円(100円×5万個)
2021年の実質GDP 600万円(100円×6万個)
2022年の実質GDP 600万円(100円×6万個)

上記のようにパンの販売個数と市場価格をもとに計算をすると、パンの価格上昇(物価上昇)の影響を受ける名目GDPは、実質GDPと比べて経済規模が拡大しているように見えます。しかし、実質GDPの2021年と2022年を比較すると、どちらも販売個数は変わらないので、物価の変動を除いて計算をする実質GDPにおいては経済規模の拡大は見られません

したがって、実際の経済成長を判断する指標としては、モノやサービスの物価変動の影響を取り除いた実質GDPのほうが重視されています。

DIとは何か?

DI(Diffusion Index)とは、企業の業況感や設備、人材の過不足などの各指標を数値化し、景気動向の方向性を表す指数をいいます。景気が良いと感じている企業から、景気が悪いと感じている企業の割合を引いて計算するものです。

参照:日本銀行「短観で使われている「D.I.」とは何ですか?」

景気の影響を受けやすい28種類の指標データを集めたうえで、先行指数(景気を先取りして動く)・一致指数(景気とほぼ連動して動く)・遅行指数(景気から遅れて動く)の3つの系列に分類されます。各指標の値を3ヶ月前の数値と比較して、増加・減少・変化なしのいずれかを判定したうえで計算をします。

DIは50%を超えていれば景気が良いと判断し、50%を下回っていれば景気が悪いと判断します。ただし、あくまで目安を示す指標であるため、DIだけで景気判断を行うわけではありません。

DIはあくまで、各部門(人材採用関連部門・住宅関連部門・投資関連部門など)の景気動向を知るためのものなので、経済状況全体をカバーするものではないからです。ちなみに、好景気の場合のDIは100%、不景気の場合はDIが0%に近い傾向になるのも特徴だといえます。

景気減速と景気後退は意味が異なる

景気後退と似たような言葉に、景気減速があります。景気減速とは景気が拡大している時期にそうした状況が落ち着く、もしくは拡大速度が鈍る状態を指す言葉です。

一方、景気後退は不景気である状態を表しており、景気減速よりも景気が悪い状態にある点を押さえておきましょう。

リセッション入りするとどうなるのか

リセッションに入ると、短くても半年間は景気後退の局面が続くことになりますが、どれくらいの期間続くかについては明確な基準がありません。全米経済研究所によれば、1945年以降に発生したリセッションにおいて、平均11ヶ月続いたという結果が示されています。

参照:ニッセイ基礎研究所「米国のリセッション判定と景気の現状」

リセッションの状態が長期にわたって続けば、一般的には恐慌と呼ばれています。リセッションの期間が長くなるほど、経済に与える影響が大きくなるといえるでしょう。

1969年以降のリセッションは8回!?過去の事例を紹介

アメリカで1969年以降に起こったリセッションは、全部で8回です。アメリカ経済の状態は世界経済にも影響を与えるものなので、過去の事例を押さえておくことは大事だといえます。

ここでは、アメリカで過去に起こったリセッションを解説します。

アメリカで起こった過去のリセッション

アメリカでは過去8回リセッションが起こっているので、古いものから順に経過を追っていきます。一般的に株価は景気の先行指数(数ヶ月先の景気を先取りして動く指数)といわれているので、株価の動きとあわせて見ていきましょう。

8回のリセッションを表にまとめると、以下のとおりです。

リセッション入り 終了時期 底打ちのタイミング 期間
1969年12月 1970年11月 1970年6月 12ヶ月間
1973年11月 1975年3月 1974年9月 17ヶ月間
1980年1月 1980年7月 1980年3月 7ヶ月間
1981年7月 1982年11月 1982年7月 17ヶ月間
1990年7月 1991年3月 1990年10月 9ヶ月間
2001年3月 2001年11月 2002年9月 9ヶ月間
2007年12月 2009年6月 2009年3月 19ヶ月間
2020年2月 2020年4月 2020年3月 3ヶ月間

まず、1969~1970年にかけて発生したリセッションは12ヶ月間続き、リセッションに入った7ヶ月後の1970年6月に底打ちしています。リセッションに入ってからも株価が下落していました。

次に、1973年からのリセッションは17ヶ月間続きました。底打ちしたのは11ヶ月後で、強いインフレが起こっていた背景があり、比較的長く景気後退の局面が続いていたといえます。

1980年のリセッションは比較的短めでしたが、翌1981年に再び景気が後退し、17ヶ月間続いています。底打ちしたのは12ヶ月後で、その間に株価は大きく下落しました。

1990年のリセッションは9ヶ月間続きましたが、株価は直後から下落トレンドに入りました。同時に金利も下落をしていましたが、株価の下支え効果を発揮するまでには時間がかかっています。

そして、しばらくは景気拡大期が続いたものの、2001年にリセッション入りし、その後は2007年に19ヶ月間の景気後退局面となりました。2007年の景気後退は底打ちするまで16ヶ月かかり、長期にわたって大きな影響が出ていたことがうかがえます。

最後は2020年のコロナショックにおけるリセッションです。底打ちしたのは2ヶ月後で、リセッション期間としては3ヶ月間でした。

この間に金利は大幅に引き下げられ、下落した株価はその後大きく反転しています。過去のリセッションにおいては、株価はリセッションの前半で大きく下げる傾向が見られます

投資のタイミングを判断するうえで、過去のリセッションと株価の動きをしっかりとチェックしておくことが大事です。

ブラックマンデー

ブラックマンデーとは
・1987年10月19日月曜日にアメリカのニューヨーク株式市場で発生した大暴落
・ダウ工業株30種平均はわずか1日の取引で22.6%(508ドル)も暴落
・双子の赤字やプログラム売買の導入が影響していた

ブラックマンデーとは、1987年10月19日月曜日にアメリカのニューヨーク株式市場で発生した大暴落のことを指します。ダウ工業株30種平均はわずか1日の取引で22.6%(508ドル)も暴落し、市場に大きな影響を与えました。

当時のアメリカは財政赤字と貿易赤字という、いわゆる「双子の赤字」を抱えた状態にあったため、ドル安の影響によるインフレ懸念から大暴落が起こったものと判断されています。

また、この時期にはコンピューターを使って一定のルールのもと、株式などを自動売買するシステムである「プログラム売買」が導入された時期でもありました。そのため、ブラックマンデーにおいては、プログラム売買が株価下落を加速させたという見方もあります。

ニューヨーク市場での暴落は世界中に影響を与え、各国の市場で同時株安の状態に陥りました。

参照:大和証券「ブラックマンデー」

リーマンショック

リーマンショックとは
・2008年にリーマン・ブラザーズが総額6,000億ドル超の負債を抱えて倒産したことがきっかけ
・「サブプライムローン」の融資基準を緩和したことが遠因としてある
・世界的な株価暴落へとつながった

リーマンショックとは、2008年にアメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズが総額6,000億ドル超の負債を抱えて倒産したことがきっかけとなった、世界的な金融・経済危機のことを指します。アメリカ政府が2001年以降に、低所得者を対象とした高金利の住宅ローンである「サブプライムローン」の融資基準を緩和したことが遠因としてあります。

サブプライムローンを組み入れた証券化商品に対し、投資家の資金が多く集まっていました。しかし、2007年以降は地価の下落と同時に、借り手の返済が滞り始めたことで金融機関は次々と損失を計上するようになり、サブプライムローンの問題が表面化することになったのです。

アメリカの金融機関の中でも、サブプライムローン関連の損失を多く計上したリーマン・ブラザーズが米連邦破産法の適用を申請し、2008年9月15日に倒産しました。似たような状況にあった金融機関に対する連鎖倒産への懸念や政府の対応を巡る混乱も、市場の不信感を高め、世界的な株価暴落へとつながりました。

参照:金融広報中央委員会「リーマンショックとは」

コロナショック

コロナショックとは
・渡航禁止や外出禁止、営業自粛などの感染防止対策の影響から経済が停滞した
・リスクの高い資産が多く売却され、株価の下落につながった
・株価の下落が止まった要因として、各国の金融政策・財政政策があげられる

新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広まったことによって、渡航禁止や外出禁止、営業自粛などの感染防止対策の影響から経済が停滞し、企業業績が悪化するという懸念から株価が大きく下落しました。新型コロナウイルスについては、2020年2~3月の時点では未知のウイルスでした。

経済への影響がどの程度出るのかを予測するのは困難であったため、リスクの高い資産が多く売却され、株価の下落につながったといえます。ただし、2020年3月後半にはアメリカ市場ではリセッションが底打ちし、その後の株価は急激に回復しています。

株価の下落が止まった要因として、各国の金融政策・財政政策によって、世の中にお金が出回りやすくなったことがあげられます。また徐々に、コロナショックから回復する道筋の予測が行えるようになってきたため、市場に落ち着きが見られるようになったといえます。

参照:経済産業省「コロナショックと世界経済の状況」

リセッションになった場合の影響

リセッション入りすると、その影響は経済にとって広範囲に及び、元の状態に回復するまでに時間がかかるケースが多いです。ここでは、企業・株式市場・債券市場・住宅市場などへの影響がどのようなものになるのかを解説します。

企業への影響

企業への影響
・業績に影響が出るため、コストカットに取り組んでいく必要がある
・上場企業であれば、減配や無配を検討することもある
・長期的な視点で企業の成長を考えられなくなる場合もある

まず、企業への影響ですが景気が後退すれば商品やサービスが売りづらくなるため、どの企業においても業績に影響が出る部分があります。特に資本力が弱い中小零細企業は、経営そのものに影響が出てくる面もあるでしょう。

資本力のある大企業であれば、経営そのものが傾くといった事態は避けられる可能性が高いですが、それでも事業そのものを見直す必要に迫られる部分があります。新規事業や研究開発の縮小や不採算部門の整理など、会社をあげてコストカットに取り組んでいく必要があるでしょう。

また、人件費の削減を目的として解雇を行ったり、新規採用をしばらく凍結したりすることも考えられます。上場企業であれば、株価が下落する中において減配や無配を決定しなければならない場合もあります。

リセッションに対する懸念が強くなりすぎると、新規事業や人への投資が滞り、長期的な視点で企業の成長を考えられなくなることも想定されます。新商品などが生み出せなければ、景気が回復した後の競争に取り残されてしまう問題も生じるため、経営の舵取りが難しくなるでしょう。

株式市場への影響

株式市場への影響
・株価は下落する傾向にある
・内部留保の比率が高まる
・政府の財政出動や中央銀行の金融政策の変更などが注目される

株価は景気の先行指数とも呼ばれているため、リセッション入りをした株式市場においては、企業業績の悪化や今後の業績の下方修正などが意識されて、株価は下落する傾向にあります。また、株式配当についても、企業業績が悪化すれば減配や無配といった処置を取らざるを得なくなってくるでしょう。

景気後退の局面においては、企業の資本力はとても重要であるため、内部留保が高まる傾向も見られます。また、経営破たんの懸念がある大企業や中小零細企業に対して、政府が支援策を行う場合もあります。

経済全体が収縮する中において、政府の財政出動や中央銀行の金融政策の変更などが、株式市場においても注目されやすくなります。ただし、全体の傾向としてはリスクが高いと判断される株式よりも、安全資産とされる国債や金現物などに投資がシフトする傾向が見られるでしょう。

債券市場への影響

債券市場への影響
・安全資産と見なされる債券市場に資金が集まりやすい
・債券には国債と社債がある
・利回りに注目しておく必要がある

リセッションが起こると、債券市場は一定の動きが見られます。景気後退の局面では安全資産と見なされる債券市場に投資家の資金が集まりやすい傾向があるからです。

債券は大きく分けて、国債と社債があります。安全資産という観点で見れば、社債よりも国債のほうがより安全な資産と判断される場合が多いでしょう。

格付けの低い社債であれば、株式と同様にリスクの高い資産と見なされるため、国債に対する需要が高まるのです。そのため、国債の価格が上昇します。

リセッションのときには国債の需要が増し、価格は上昇するため市場に与える影響が大きくなります。一方で、債券価格と反比例の関係にある国債の利回りは低下傾向となるでしょう。

国債に対する需要が旺盛であれば、低い利回りでも資産を保有したいと思う投資家が増えるためです。国債価格と同様に、国債の利回りについても注目しておく必要があります。

住宅市場への影響

住宅市場への影響
・リセッションは住宅価格にとって下落要因となる
・住宅ローンの支払いに苦しむ人が出てくるケースがある

リセッション入りすると、住宅価格にとっては下落要因となります。代表的な事例としては、2008年に表面化したサブプライムローン問題があげられます。

新築住宅の過剰な供給と住宅ローンの過剰な貸し出しが金融市場の混乱を招き、それに伴って住宅価格が急落しました。住宅ローンをすでに支払い終えている人にとっては、住宅価格の下落は一時的な損失にすぎません。

しかし、景気拡大期に住宅を高い価格で購入した人にとっては、その影響は一時的なものに留まらない部分があります。リセッションによって住宅ローンの返済が滞って家を手放すだけでなく、その後長期にわたって住宅ローンの支払いに苦しんでしまうケースも見られます。

投資や株への影響

投資や株への影響
・底打ちが見られるまでは株価は下落する流れを見せる
・ディフェンシブ銘柄に注目が集まる
・金現物などは価格が上昇するケースが見られる

リセッション入りすると、投資や金融商品などに大きな影響が出る場合が多いでしょう。企業は業績悪化や先行きの不透明感から、新規事業への投資や設備投資などを控える傾向が見られますし、新規採用を凍結するケースも見られます。

また、株主に対しては減配や無配を提案することになる場合もあるでしょう。そうした流れができることで、投資家はリスクの高い株式などの資産から、安全性が高いといわれる債券市場などに資金をシフトする傾向が出てきます。

先に述べたアメリカの事例からも、過去の景気後退局面においては底打ちが見られるまでは株価は下落する流れを見せています。株式取引を好む投資家も、いわゆるディフェンシブ銘柄に投資をすることが多いです。

ディフェンシブ銘柄とは、景気動向に企業業績が左右されにくい銘柄のことを指します。具体的には、生活必需品である食品や医薬品、社会のインフラである電気・ガス・鉄道・通信などの事業を展開する企業の銘柄です。

株価指数そのものはリセッションにおいては下落傾向を見せるため、個別企業のビジネスモデルにより注目が集まりやすいタイミングともいえます。さらに、商品(コモディティ)取引においてもほとんどの商品価格は下落しますが、金現物などは逆に価格が上昇するケースがあります。

金現物が求められる理由はその希少性であり、安全資産として注目されています。実際に、コロナショックにおいてはニューヨーク金先物の価格は、史上最高値を更新しました。

リセッション入りはいつか予測することも可能

リセッション入りがいつになるかを正確に把握するのは困難ですが、いくつかの指標を用いることである程度は把握することが可能です。ここでは、GDPの他に次の6つの指標を紹介します。

リセッション入りを表す6つの指標
・PMI製造業指数
・商業動態統計調査
・イールドカープ
・賃金と所得の傾向
・雇用の傾向
・物価と金利

それぞれの指標について、さらに詳しく解説します。

PMI製造業指数

PMI製造業指数(購買担当者景気指数)は、製造業の景気動向を測るための重要指標です。毎月発表される指標であるため、四半期ごとに発表されるGDPとは違ってリセッションのサインを察知しやすくなります。

PMI製造業指数は、企業の購買担当者らの景況感を集計したもので、国別・業種別に集計が行われています。代表的なものとしては、米ISM(Institute for Supply Management)やIHS Markit社が公表しているものが有名です。

調査方法としては、企業の購買担当者に生産・新規受注・受注残・雇用・価格・購買数量などをアンケートします。それらのデータを集計し、指数化したものがPMI製造業指数です。

製造業の企業の購買担当者は、製品の需要や取引先の動向などを見ながら仕入れを行うため、PMI製造業指数は今後の景気動向を見るうえで先行指標として捉えられています。具体的な指標の見方としては、「50」を景況感の分岐点としており、50を下回れば景気が悪いという判断になります。

さまざまな国や地域で調査・公表が行われており、速報性の高さから市場関係者にも注目されている指標です。なお、日本においては「日銀短観」が同様の指標として取り扱われています。

参照:SMBC日興証券「PMI」

商業動態統計調査

商業動態統計調査は、経済産業省が公表している統計データです。小売業や卸売業の商業販売額が業種別にまとめられているので、流通業界全体の状況を把握することができます。

商業販売額というのは、国内のすべての小売業者と卸売業者の売上高の合計値を示すものです。2021年の調査によれば、小売業全体の商業販売額は約150兆円、卸売業全体の商業販売額は約401兆円となっています。

卸売業の商業販売額が小売業よりも大きいのは、法人向けに商品が供給されているからだといえます。過去30年間をさかのぼって商業販売額の推移を見てみると、小売業は2021年に至るまでほぼ横ばいとなっているのが特徴です。

一方、卸売業は商業販売額に低下傾向が見られる時期があるものの、拡大傾向の時期も見られます。リーマンショックやコロナショックといった外的変化の影響は、卸売業のほうが受けやすいでしょう。

小売業が安定的に商品を供給できるように、卸売業が調整弁の役割を担っているともいえます。また、EC(インターネット通販等)業界の成長に伴って、卸売業の売上は少しずつ低下傾向が見られます。

しかし、経済産業省が公表している「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、EC市場が小売市場に占める割合は8.08%となっており、まだ10分の1にも達していない状況です。将来的にはEC業界の成長が見込まれていますが、小売業と卸売業の全体的な景気動向を見る指標として、商業動態統計調査はまだ役立つといえます。

参照:経済産業省「商業動態統計調査」

イールドカープ

債券を購入する投資家の中には、イールドカーブでリセッションを予測しようとする動きも見られます。債券市場においては国債が取引されていますが、国債を購入すると通常の場合では国債の利子(クーポン)を定期的に受け取ります。

そして、国債が償還期限を迎えれば、元本が返ってくるのが国債に投資したときの基本的な流れです。国債の利回りは一般的に、償還までの期間が長ければ長いほど高くなります。

なぜなら、償還期間が長いほど将来に対するリスクは増大するので、リスクプレミアムとして利回りが高くなるのです。国債には短期債と長期債がありますが、これらの金利差をイールドカープと呼びます

通常の経済情勢下では、短期債と長期債の金利差はチャート上ではどちらも右肩上がりの傾向を見せる場合が多いです。しかし、リセッションが意識され始めると、短期債にリスクプレミアムが上乗せされます。

この現象を「逆イールド」といい、将来のリセッション入りを表す重要なサインとして意識されることがあります。長期債の金利よりも短期債の金利が高くなることで、イールドカープは右肩下がりとなるので、チャート上でも確認しやすい現象だといえます。

参照:野村證券「イールドカープ」

賃金と所得の傾向

景気後退の局面では、賃金や所得にも変化が見られます。景気拡大期であれば、労働者の賃金と所得は上昇していくのが一般的です。

商品やサービスがどんどん販売されるため、企業は高い賃金を支払ってでも、労働者を確保したいという動きを見せるでしょう。一方で、景気後退の時期は商品やサービスがだんだんと売れなくなるため、賃金や所得の増加は頭打ちとなります。

ただし、近年においては経済のグローバル化が進展し、賃金と所得については必ずしも上記のような傾向が見られるわけではありません。むしろ、賃金と所得の動きは、労働者が持つ専門知識や技術が時代に合ったものであるかどうかといった部分が影響しているでしょう。

したがって、賃金や所得からリセッションの可能性を判断するには、他の指標と組み合わせながら分析を行う必要があります。

雇用の傾向

失業率が高くなり続けると景気が悪化しているという感覚は、一般的なものでもあります。雇用市場も賃金や所得などと同じように、景気拡大期には多くの労働者が雇われるので、失業率は低下する傾向があります。

しかし、景気後退の時期に入ると企業が新規採用を凍結したり、余剰人員を解雇したりするので失業率が上昇する傾向が見られます。雇用に関する指標は、実際に景気が悪化してから表面化してくるので遅行指標ともいえるでしょう。

失業率が上昇し続ければ、リセッションの可能性は高まっていると考えられます。なお、失業率とは完全失業率のことを指し、労働力人口(就業者と完全失業者の合計)に占める、完全失業者の割合をいいます。

物価と金利

物価と金利の動きについても、リセッションを予測する際には重要な指標となります。リセッションが予測される段階では、各国の中央銀行は物価を安定させるために、金融政策の変更を行う場合があります。

具体的には政策金利を変更することですが、リセッションにおいては金利を引き下げ、低金利政策を行う傾向が見られるでしょう。低金利とすることで、企業が金融機関から借り入れを行いやすくし、景気拡大を促す狙いがあります。

一方で、景気が過熱している局面においては政策金利を引き上げ、物価上昇を抑えようとします。こうした政策金利の変更はリセッションを判断する1つの指標となるのです。

コロナショックにおいては、各国の中央銀行は低金利政策を実施しました。しかし、ゼロ金利やマイナス金利を導入しても、なかなか個人消費の回復が見られない場合は、リセッションが長引くものと予測されます。

中央銀行の役割として物価の安定があげられますが、金融政策の変更など手段に限りがあるため、思ったような効果が出ないと不況に突入することもあります。日本においても物価が低下し続けるデフレの状態となり、長らく日本経済を苦しめる要因となりました。

リセッション時に気をつけたいポイント

リセッション入りをしていると判断されるときは、投資判断は慎重に行う必要があります。ここでは、特に気をつけておきたいポイントを解説します。

新しい商品や安い商品に飛びつかない

気をつけたいポイント
・ビジネスモデルがはっきりとしない企業に投資をしない
・値ごろ感から安易に投資を行うのはリスクになる
・購入してからさらに下がるリスクもある

リセッション入りすると株式市場などが低迷するため、新たな金融商品に手を出す投資家が一定数見られる傾向があります。ビジネスモデルがはっきりとしない企業などに投資をするのは、通常時でもリスクが高いものです。

景気後退の時期に、収益のモデルが分からないビジネスや企業に投資をするのは、リスクを倍増させる要因になるでしょう。また、株価が下落したからといって、値ごろ感から投資を行うのもリスクが高いといえます。

過去の事例からも、リセッションが底打ちするまでの期間は株価が下落傾向にあるため、株を購入してからさらに下がるリスクもあります。新しい金融商品や値ごろ感のある株だからといって、安易に飛びつかないことが大切です。

あまり知らない投資方法には切り替えない

気をつけたいポイント
・最初に自分で決めたルールを守ることが大事
・基本的な仕組みがよく理解できないものに手を出してはいけない
・しばらく様子を見ることが大切

投資を行うときは、最初に自分で決めたルールを守ることが重要です。本来であれば、長期投資で株を購入していたはずが、多少値下がりしたからといって売却してしまっては、自分で決めたルールを自ら破ってしまうことになります。

また、インターネットなどではさまざまな投資方法が紹介されていますが、基本的な仕組みがよく理解できないものをうかつに信じ込んではいけません。安易に投資方法を切り替えてしまうと、予想外に相場が動いた際に自分で対処することができなくなってしまいます。

むやみに流行りの手法に乗ろうとせず、しばらく様子を見て冷静に判断しましょう。

デイトレードをしない

気をつけたいポイント
・デイトレーダーの実に97%が300日間で損失を被っている
・相場全体の流れを慎重に判断することが大切

デイトレードとは、同一銘柄をその日のうちに売買することで、翌日にポジションを持ち越さない投資手法を指します。1日に何度も取引を行えば、その分だけで損失を抱えるリスクが高くなるので注意が必要です。

Markets Insiderの調査によれば、デイトレーダーの実に97%が300日間で損失を被っているという結果が出ています。口座を持っていれば誰でも始められる投資方法だからこそ、多くの方が失敗しやすい部分もあります。

仮に短期的には利益を出せたとしても、年間で見れば結局損失を抱えてしまうというケースもあるでしょう。損失を取り返そうとしてトレードを始めるのではなく、まずは相場全体の流れを慎重に判断することが大切です。

価格が下落しても売らない

気をつけたいポイント
・早急な判断はかえって損失となる可能性がある
・金融庁も長期投資を推奨している
・ドルコスト平均法ならリスクを低減できる

相場が下落すると、焦って売却する人が多いため、相場が大きく崩れることがあります。そうした状況を見ていると、投げ売りをしたくなる衝動に駆られることもあるかもしれませんが、早急な判断はかえって損失となる可能性があるでしょう。

景気はあくまで循環しているものなので、下落した相場もやがて経済情勢に応じて回復していきます。短期的な相場動向だけで判断するのではなく、長期的な視点で投資を行うことも大切です。

金融庁も長期投資を推奨しており、代表的な長期投資の手法としてドルコスト平均法があげられます。短期的には含み損を抱えていたとしても、購入時期をずらしながら全体を平均してみると、購入単価を下げながらリスクも低減することができます。

参照:金融庁「投資の基本」

ドルコスト平均法とは

ドルコスト平均法とは、一定の金額を一定の期間ごとに投資する方法を指します。一度にまとめて投資をするのではなく、投資のタイミングをずらすことによって、リスクの分散を図れます。

相場は常に変化しており、リセッション入りするとさらにその動きが加速するため、市場の予測をするのは難しい部分があります。ドルコスト平均法であれば、投資初心者であっても取り組めるので、長期投資を行う場合は有効な方法です。

どの程度の金額をどういったサイクルで購入するかは、投資家自身が決めればよいものなので、自分に合った投資スタイルを見つけやすくなるでしょう。投資におけるルールを先に決めておくことで感情を持ち込まずに投資ができますし、市場の動きにもむやみにとらわれなくなります。

実際にドルコスト平均法を実践した場合の例を見ていきましょう。仮に、毎月1万円ずつを投資資金として用意し、1株あたりいくらで購入できるかを計算してみます。

期間 投資額 株価 購入株数 合計株数
1ヶ月目 10000円 400円 25株 25株
2ヶ月目 10000円 500円 20株 45株
3ヶ月目 10000円 200円 50株 95株

1ヶ月目の株価が1株あたり400円だった場合、25株を取得できます。2ヶ月目に株価が100円上がったことで、取得できる株は20株に減ります。

そして、3ヶ月目に株価の下落が起こり、1株あたり200円になったとします。この場合、50株を取得することができ、3ヶ月で取得した株数の合計は95株となります。

この間に投入した資金は合計で3万円なので、1株あたりの取得単価を計算すると「約316円」となります。一方、1ヶ月目の相場で3万円を投じて同一の銘柄を購入したときは、1株あたり400円なので75株しか取得できません。

このようにドルコスト平均法を用いることによって、1株あたりの取得単価を下げられるだけでなく、合計の取得株数も増やすことができます。上記はあくまで一例なので、相場の動きによっては割高となってしまう場合もありますが、長い期間で見ていけばメリットのほうが大きいといえるでしょう。

アメリカの株式と景気の関係を知っておく

気をつけたいポイント
・1969年以降で、過去8回のリセッションが起こっている
・20~30年単位で相場を見ていくと結果的にプラスのリターン
・ドルコスト平均法を用いれば、相場の下落局面において安い価格で株を購入できる

アメリカ株は1969年以降で見ても、過去8回のリセッションが起こっているため、下落相場となることはこれまでにも起きています。しかし、相場が底値を打ったタイミングから再び上昇する傾向も見られており、20~30年単位で相場を見ていくと結果的にプラスのリターンが得られています。

アメリカの代表的な株価指数であるS&P500は、相場の下落と上昇を繰り返していますが、全体として見たときにはきれいな右肩上がりのチャートを得買いているのが特徴です。チャートはあくまで過去のデータではありますが、多くの投資家がチャートを分析しながら取引を行っているため、同じような傾向が見られると予測できる面もあるでしょう。

先ほど紹介したドルコスト平均法を用いれば、相場の下落局面においてはむしろ安い価格で株を購入できます。投資する金融商品と相場の関係をよく理解しておくことで、適した投資方法を見つけてみましょう。

回復・好況まで投資を継続する

気をつけたいポイント
・長期投資であれば、下落局面でもすぐに株を手放す必要はない
・いずれ景気は回復の方向に向かう

過去の相場の事例から、景気が循環していることが分かりますし、好景気と不景気はどちらもいつまでも続くわけではありません。そのため、リセッション入りをして下落相場となったとしても、長期投資であればすぐに手放す必要がないといえます。

多少ポートフォリオを整理したとしても、すぐに保有する株などを売却する必要はないでしょう。景気が回復期・好況期を迎えるまで保有し、投資を継続する姿勢を持つことも重要です。

いくら商品やサービスがなかなか売れないといっても、いつまでも企業が生産活動や設備投資を抑えるわけではないので、やがて経済は再び回復の兆しを見せてくるでしょう。リセッションが起こる原因は、そもそも需要と供給のバランスが崩れているからであり、その部分が解消すれば景気は回復の方向に向かうはずです。

いずれ景気が回復することを見込んで、落ち着いた気持ちで相場と向き合っていく必要があります。

金や不動産投資にシフトする

気をつけたいポイント
・リセッションでは、安全性の高い資産へと資金が動く
・金現物も値上がりしやすい
・不動産投資に人気が出やすい

リセッションが起こると、リスクの高い株式などの資産から、安全性の高い資産へと資金が動く流れが見られます。商品取引においては多くのものが下落傾向となりますが、金現物はその希少性の高さから、逆に価格が上昇する傾向にあります。

過去のチャートを見ても、金現物はリセッションのタイミングで価格が上昇する傾向にあり、コロナショックにおいては史上最高値をうかがう動きをしました。国債などの債券と並んで、安全資産として注目が集まりやすい金融商品です。

また、同じように不動産投資もリセッション時には人気が集まりやすいといえます。株式などの金融資産ではなく、現物資産として不動産の価値が見直されるといってもよいでしょう。

不動産価格はそもそも、定価というものが存在せず、市場取引によって価格が決まるものです。また、企業が生産活動を行ったり、建物を建設したりするには土地が必要になるため、景気回復後の流れを見込んで資金が集まるといえます。

加えて、リセッションの時期には金利が低く抑えられるため、不動産を購入しやすい環境が整っているのも不動産投資に人気が出る要因となっています。ある程度まとまった資金を用意できるならば、不動産投資を検討してみるのも1つの方法です。

株式投資を始める

気をつけたいポイント
・株価が安くなっているタイミングでは購入のチャンス
・企業の業績や財務状況は個別に確認をする必要がある
・ドルコスト平均法などを用いて、リスクを分散させることが大事

リセッション入りすると、過去の事例からも株価が大きく下落することがあります。株式投資の基本は安く買って高く売ることにあるので、株価が安くなっているタイミングでは購入のチャンスでもあります。

株価が安いときに購入しておけば、将来景気が良くなったときに売却することで利益を得られるチャンスが見込めます。ただし、景気が悪化する前から株価が下がっている企業の株は注意が必要です。

相場の動きとは関係なく、業績が悪化して将来的にも収益力が低い企業であると市場から判断されている場合もあります。個々の企業の財務状況や事業の見通しなどを踏まえたうえで、投資先を選んでいく必要があるでしょう。

しかし、初めて投資を行う方や投資経験が浅い方の場合は、個別銘柄を精査するのは難しく感じる部分もあります。そのような場合はドルコスト平均法を用いるなどして、できるだけリスクを分散させることが大切です。

また、興味がある方は編集部が執筆したネット証券 おすすめの記事もご確認ください。

ディフェンシブ銘柄に投資する

気をつけたいポイント
・生活インフラなどは、たとえ不況期であっても一定の需要が見込まれる
・株価が大きく下がっているときには、安く購入できるチャンス
・ディフェンシブ銘柄は長期投資にも向いている

リセッションでは、商品やサービスがなかなか売れないため、企業業績が悪化する傾向にあります。しかし、景気後退の局面であっても、生活そのものに関連する商品やサービスの需要がなくなるわけではありません。

食品や医薬品など人々が生活をするうえで欠かせないものや、電気・ガス・鉄道・通信など生活インフラなどは、たとえ不況期であっても一定の需要が見込まれます。こうした銘柄をディフェンシブ銘柄といいます。

相場全体が下落基調にあるときは、ディフェンシブ銘柄も一時的に大きく売られることがあるでしょう。実際の需要と比べて、株価が大きく下がっているときには、安く購入できるチャンスでもあります。

また、ディフェンシブ銘柄は景気動向に左右されにくいのが特徴であり、安定的な配当利回りも期待できます。長期投資にも向いている銘柄なので、ドルコスト平均法を活用してコツコツと資産を築いていくのもよいでしょう。

できるだけリスクを抑えながら株式投資を行うには、業種別の特徴も踏まえたうえで投資先を選ぶことが大切です。

代表的なディフェンシブ銘柄

代表的なディフェンシブ銘柄
・ヤクルト
・NTT
・ダラー・ゼネラル(DG)
・TモバイルUS

日本の代表的なディフェンシブ銘柄として、「ヤクルト」があげられます。ヤクルトは乳酸菌飲料の製造・販売において、国内でもトップクラスの企業です。

また、海外の売上比率が全体の4割程度を占めており、世界39の国と地域に事業展開しています。中長期的に業績を拡大させている企業なので、長く持ち続けられる銘柄だといえるでしょう。

また、通信最大手の「NTT」も安定的な収益をあげている企業です。日本の通信業界は参入障壁が高く、通信は生活インフラとして欠かせないものです。

NTTはスマートフォン事業を行っているNTTドコモなど、グループとして強固なビジネスモデルを確立しています。月額利用料金を軸とした収益モデルは、景気動向に左右されない安定性のあるビジネスだといえるでしょう。

一方、アメリカ株のディフェンシブ銘柄としては、「ダラー・ゼネラル(DG)」があげられます。ダラー・ゼネラルはアメリカ南部を中心として、日常的に必要な食品や日用品を提供している小売企業です。

価格帯は1~10ドルのものが中心であり、景気が悪化した局面においては、むしろ顧客の増加が見込まれる企業ともいえます。コロナショックの折も、生活必需品を提供する企業として営業が許可されたことによって、さらに業績を高めています。

そして、「TモバイルUS」はアメリカの通信会社であり、コロナショックが起こった2020年にも業績を大きく伸ばしています。5Gでの低価格プランを提供するなど、景気の悪化にかかわらず好調な業績をあげているのが特徴です。

2020年にはソフトバンクグループの傘下であるスプリントと合併をし、経営基盤も安定しています。将来的にも業績の拡大が見込まれるため、長期投資に向いている銘柄だといえるでしょう。

分散投資をする

気をつけたいポイント
・株式投資は一般的に、ハイリスク・ハイリターンの金融商品といわれている
・リスクをできるだけ低く抑えるために、分散投資を行うことが大事
・ポートフォリオの見直しは定期的に行う

株式投資は一般的に、ハイリスク・ハイリターンの金融商品といわれています。リセッション入りすると、リスクの高い資産が敬遠され、株価が大きく下落することが多いので注意が必要です。

ただし、銘柄によってはディフェンシブ銘柄のように、不景気でも安定した業績をあげている企業もあります。相場全体の下落が原因でディフェンシブ銘柄などが安くなれば、個別に投資をするのは1つの方法です。

また、投資を行う際はリスクをできるだけ低く抑えるために、分散投資を行うほうがよいでしょう。たとえば、リセッションの時期には国債などの債券市場に注目が集まりやすくなります。

債券はローリスク・ローリターンと一般的にはいわれているので、安全資産の1つとして人気が集まりやすいのです。同様に、金現物や不動産投資なども、リセッションのタイミングでは注目されやすいでしょう。

ポートフォリオは、ハイリスクとローリスクの投資先をうまく組み合わせることが大切です。1つの投資先だけに資産を集中させるのではなく、複数に分散させることによって、安定したリターンを得やすくなるでしょう。

また、ポートフォリオの見直しは定期的にチェックすべきですが、短い期間で投資先を変えすぎるのはよくありません。リセッションの時期は相場が大きく変動するため、まずは資産をしっかりと守り、景気回復の局面で利益が出せるような資産配分を心がけてみましょう。

景気にあまり影響されないFX投資に切り替える

投資先の1つとして、FX取引(外国為替証拠金取引)を検討してみるのもよいでしょう。FXのおもなメリットとして、次の点があげられます。

FXのおもなメリット
・上昇局面と下落局面の両方で利益を狙える
・少額で投資を始められる
・取引時間が長い
・手数料が割安で取引コストを抑えられる

FXは2国間の通貨を売買することによって利益を得る投資方法です。リセッション時は金融政策などの影響を受けますが、FXは「買い」と「売り」のどちらからでも取引を行えるので、基本的に下落局面でも利益を狙うことができます。

相場が下落すると予測される場合は、売りポジションを持つことで利益を狙えるでしょう。取引をする通貨ペアにもよりますが、少額の投資資金でも投資を始められるのも魅力です。

また、株式投資と比べて取引時間が長いので、自分のライフスタイルに合わせた投資を行えます。早朝や深夜でも市場で取引が行われているので、好きなタイミングで取引を行えるメリットがあります。

さらに、FXは売買を行う際にかかる取引コストが比較的安いといった特徴もあげられます。手数料は利用するFX会社によって異なりますが、スプレッド(買値と売値の差)をできるだけ抑えているFX会社もあるので、自分に合った会社を選ぶことで投資効率を高められるでしょう。

また、興味がある方は編集部が執筆したfx おすすめの記事もご確認ください。

複数のFX会社の中でも、特におすすめの3社の特徴を紹介します。

GMOクリック証券
(FXネオ)
DMM FX

外為どっとコム

取引単位

1,000通貨単位

10,000通貨単位

1,000通貨単位

取引手数料

無料

無料

無料

スプレッド(米ドル円)

0.2銭

(原則固定、例外あり)

0.2銭
(原則固定、例外あり)

0.2銭

スワップポイント

米ドル円:147円(1万通貨)


米ドル円:146円(1万通貨)
 

米ドル円:140円(1万通貨)

通貨ペアの取扱い数

20通貨ペア

21通貨ペア

30通貨ペア

 

各FX会社の特徴をさらに詳しく解説します。

GMOクリック証券


出典:GMOクリック証券

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・高機能な取引ツールが用意されている

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出典:DMM FX

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出典:外為どっとコム

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最小取引単位(米ドル/円) 1,000通貨
スプレッド 米ドル/円 0.2銭
ユーロ/円 0.4銭
ポンド/円 0.7銭
口座開設日数 最短当日
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リセッションの時期をよく見極めて投資のチャンスを見つけよう!

景気は、一定の周期で好景気と不景気を繰り返す景気循環があると一般的にいわれています。リセッション(景気後退)では株式市場は大きく下落する傾向が見られますが、すべての金融商品に当てはまるわけではありません。

また、株式の中でもディフェンシング銘柄と呼ばれるものは、不景気の中にあっても好調な業績を出しているものが多いといえます。株価が下落したタイミングでは、投資を検討してみるのも1つの方法です。

投資で成功するには長期投資や分散投資、ドルコスト平均法などの基本を身につけておくことが大切です。加えて、あまり景気動向に左右されないFXや金現物、不動産投資などの特徴を把握して、リスクを抑えながら投資に取り組んでみましょう

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